”暑さ疲労”対策アイテム&暑さ対策今昔

vol.60 特集 学んで防ぐ ”暑さ疲労”

特集記事

夏は疲労の季節!?

今年も厳しい暑さが予想されている日本の夏。2022年の夏は、平均気温が1898年の統計開始以来2番目の高さとなり、東京では最高気温35℃以上の猛暑日が過去最多の16日となるなど記録的な暑さになりました。
しかし、暑いのは夏ばかりではありません。今年はすでに4月から最高気温が30℃を超える真夏日になるところがあったほか、梅雨時も高温多湿になりやすく注意が必要。暑さやそれに伴う生活習慣によって引き起こされる疲労は、もはや「夏バテ」とは呼べなくなりそうです。

対策アイテム

今年の夏はこれで乗り切る!
”暑さ疲労”対策アイテム1

〝暑さ疲労〞は、その原因やメカニズムに合わせたきちんとした対策をとることで予防・解消することができます。厳しい夏に役立つ”暑さ疲労”対策をご紹介します。

暮らし編

サーキュレーター

エアコンと併用して自律神経に優しい生活

“暑さ疲労” や熱中症を予防するために活用したいのが、エアコンです。しかし、部屋の温度が下がり過ぎたり、冷たい風が直接当たって体が冷えたりすると、自律神経に大きな負担がかかり、かえって“暑さ疲労” の原因になってしまいます。
そこでおすすめなのがサーキュレーター。下の方にたまりやすい冷たい空気と上の方にたまりやすい暖かい空気を循環させることで、設定温度を少し高めにしても部屋全体を効率的に涼しくすることができます。また、冷気が直接体に当たるのを防ぐこともできます。

エアコンの使用中に、サーキュレーターや扇風機を使って天井へ向けて風を送り、室内の空気を循環させましょう。「温度むら」を解消し、部屋の冷やし過ぎなどを防止できます。上手に使えば、節電にもつながります。

ファッション編

帽子・日傘

太陽光を遮って暑さ&紫外線対策

夏の外出に欠かせないアイテムが、強い日差しを遮るための日傘や帽子です。最近は、遮熱やUV(紫外線)カットといった機能がついたものも多いので、選ぶときには「遮光率」や「遮熱率」、「U V カット率」などを確認するようにしましょう。
日傘や帽子などのUV カット機能は「UPF(紫外線保護指数)」という国際的な指標で表されることもあります。U P Fの値が1 5 以上で紫外線を防ぐ効果があり、最高値は50 。それ以上は「50+」と表示されます。

サングラス

目から入る紫外線をカットして抗疲労

紫外線が目から入ると、交感神経が興奮して自律神経の疲労につながります。目から入る紫外線対策としては、U V カット機能のあるサングラスや眼鏡が有効です。ただし、レンズの色が濃いと光を多く取り入れようとして瞳孔が開くので、U Vカット機能のついていないものでは逆に紫外線が入りやすくなる恐れがあります。レンズの色とは関係なく、UVカット率99%以上(=紫外線透過率1.0%未満)のものを選びましょう!

今年の夏はこれで乗り切る!
”暑さ疲労”対策アイテム2

暑さ疲労〞を予防するには、抗疲労成分を摂取することのほか、水分補給、栄養補給も大切。食欲が低下しやすい季節だからこそ、食事や栄養について意識しましょう。

食べ物・飲み物編

鶏むね肉

抗酸化成分イミダゾールジぺプチドが活性酸素から自律神経を守る

疲労を引き起こす活性酸素を消去してくれるのが抗酸化成分。多くの種類がありますが、“暑さ疲労”対策には自律神経の中枢がある脳で作用することが必要です。鶏むね肉などに多く含まれているイミダゾールジペプチドは、脳までしっかりと届く仕組みを持っており、高い抗酸化力で活性酸素による酸化ストレスから自律神経や脳を守ります。産官学連携の研究プロジェクトにおいて、数ある抗酸化成分の中で最も疲労感の軽減効果が高いことが明らかになっている成分です。

疲れをとるのに必要なイミダゾールジペプチドの摂取目安は 1日200mg。
鶏むね肉なら100gに相当します。

こまめな水分補給で脱水を防ぐ

“暑さ疲労” の原因の一つである脱水を防ぐには、こまめな水分補給が重要です。1 日に必要な水分は2.5Lとされており、そのうちの1.2L を飲み水でとることが推奨されています。 一度に多量の水分をとると吸収されにくくなるので、1 日8 ~ 10 回程度に分けて飲むとよいでしょう。水ばかり飲めないという方には、麦茶や黒豆茶などカフェインが入っていないお茶がおすすめです。

  1. のどの渇きを感じなくても飲むことを心がけましょう
  2. 胃腸を冷やさず吸収されやすい体温に近い温度のものがおすすめ
  3. 糖分が多く含まれるスポーツ飲料や清涼飲料水はとり過ぎに注意
  4. アルコール飲料は利尿作用があるため逆効果

【量の目安】
コップに軽く1 杯(120mL)×10 回=1.2L

みそ汁

栄養と水分を一緒に補給できる優れもの

汗とともに失われやすいナトリウムやカリウム、マグネシウムを補給でき、水分補給にも役立つのがみそ汁。旬の野菜や海藻を具材にすると、さらに多くのビタミンやミネラルを摂ることができます。また、みそ汁やスープなど温かいものを飲むと、胃腸が温められて副交感神経が優位になり、自律神経が休まります。

比べてわかる! ? 暑さ対策の今昔

最新科学でN G習慣が明らかに!

科学が進んだ現代では、それまでの対処法が実は逆効果だとわかったものも。暑さ対策について見直してみましょう。

現代にも通じる昔の人々の知恵

時代によって差があるとはいえ、やはり暑い日本の夏。昔の人々も、さまざまなかたちで暑さ対策をしていたようです。

暮らし

冷房が“ 暑さ疲労” の原因に ! ?

日本でエアコンが一般家庭に急速に普及し始めたのは、高度成長期の 1960 年代半ば。カラーテレビ・クーラー・カー(自動車)が「3C」と呼ばれました。その後、ルームエアコンの普及率は年々上昇し、2023 年 3 月末には 91.5%※となっています。日本の暑い夏にはエアコンによる冷房が欠かせませんが、一方で、冷房による室内外の温度差や冷えが “暑さ疲労” の原因にもなっています。
※内閣府消費動向調査 エアコン普及率(2人以上世帯)

平安時代も、かき氷で涼をとっていた!

今から1,000年ほど前の平安時代に書かれた『枕草子』には、植物から作った「あまづら」という甘味料をかけたかき氷が登場します。当時は、冬にできた氷を氷室(ひむろ)と呼ばれる場所で夏まで保存していました。同じ頃に書かれた『源氏物語』にも、夏の暑い日に氷で涼をとる平安貴族の様子が描かれています。

脂質の多い「スタミナ食」が胃腸の負担に

“暑さ疲労” のときには、うなぎや焼き肉など高エネルギーの食事をとれば元気になる、と考えられがちですが、それは栄養不足が疲労の原因となっていた昔の話。現代の疲労は、エネルギーを十分とっていても起こります。それどころか、脂質の多い食事は胃腸に負担をかけ、さらなる疲労につながってしまうこともあります。

うなぎは奈良時代からスタミナ食だった

飛鳥・奈良時代の『万葉集』に「石麻呂(いはまろ)に われ物申す 夏痩(や)せに よしといふ物そ 鰻(むなぎ)取り食(め)せ」という大伴家持の歌があり、痩せた石麻呂さんに「うなぎを食べたら」とすすめる歌だと解釈されています。1,200年も前から、うなぎは夏のスタミナ食として知られていたのですね。

“暑さ疲労” 対策

疲労に栄養ドリンク、
実はN G

栄養ドリンクやエナジードリンクを飲むと疲れがとれたように感じるのは、カフェインの覚醒作用などによるものがほとんど。疲労感を一時的に隠しただけで、本質的な“暑さ疲労”の回復にはなりません。それどころか、かえって疲労が蓄積してしまう危険もあります。

江戸時代の栄養ドリンクは甘酒

「飲む点滴」といわれるほど栄養豊富な甘酒。冬に飲むイメージが強いですが、俳句の世界では「甘酒」は夏の季語。江戸時代には夏の栄養飲料としても親しまれ、町なかを売り歩く「甘酒売り」もいたそうです。

vol.60号【夏】の記事