”暑さ疲労”は自律神経の疲れ

vol.60 特集 学んで防ぐ ”暑さ疲労”

夏は疲労の季節!?

今年も厳しい暑さが予想されている日本の夏。2022年の夏は、平均気温が1898年の統計開始以来2番目の高さとなり、東京では最高気温35℃以上の猛暑日が過去最多の16日となるなど記録的な暑さになりました。しかし、暑いのは夏ばかりではありません。今年はすでに4月から最高気温が30℃を超える真夏日になるところがあったほか、梅雨時も高温多湿になりやすく注意が必要。暑さやそれに伴う生活習慣によって引き起こされる疲労は、もはや「夏バテ」とは呼べなくなりそうです。

暑さ疲労は自律神経の疲れアイキャッチ

“ 暑さ疲労” は自律神経の疲れ

厳しい暑さに、体の調子を崩してしまった経験はありませんか? 
そうした暑さによる疲労感や不調は、実は自律神経が疲労しているサインです。私たちの体には、周りの環境が変化しても生命活動を維持できるよう、体内の状態を一定に保つ能力が備わっています。その仕組みとして働いているのが自律神経。自律神経には、活動時に働く交感神経とリラックス時に働く副交感神経があり、シーソーのようにバランスをとっています。
厳しい暑さや急激な気温の変化などにさらされると、24 時間休むことなく働いている自律神経とそれをコントロールする脳の視床下部に大きな負荷がかかります。その結果、自律神経と脳が疲労し、さまざまな不調につながってしまうのです。

こんな不調にもご用心

だるさ・疲労感

自律神経は、臓器や皮膚、血管、汗腺などほとんどすべての器官に関わり、生きていくために必要な体の働きを制御しています。
そのため、自律神経のバランスが乱れると、現われてくる不調は多岐にわたります。「全身的症状」としては、だるい、疲れがとれないといったものが挙げられます。

食欲不振・消化不良

食べ物を消化する際に働くのは副交感神経。通常は、食べ物が口に入ると副交感神経のスイッチが入ります。しかし、自律神経が疲れていると切り替わりにくくなり、食欲が落ちたり、消化不良を起こしたりします。

イライラ

自律神経が疲れてしまうと、現われてくるのは体の不調だけにとどまらず、「精神的症状」にも及びます。特別な理由がないのにイライラや不安が募るなら、“暑さ疲労” が原因かもしれません。

不眠

眠るときには、自律神経が副交感神経優位に切り替わっていることが大切です。交感神経が興奮したままだと、寝つきが悪くなる、眠りが浅くなるなど、睡眠の質が低下してしまうことがあります。

便秘

食べたものを消化管の先へと送っていく動きをぜん動運動といいます。ぜん動運動は副交感神経が優位な状態で活発になるため、交感神経が高まり続けていると、便秘につながってしまいます。

頭痛・肩こり

自律神経のバランスが乱れて交感神経ばかりが過剰に働くと、心身が緊張した状態が続きます。筋肉も緊張し続けるため、頭痛が起こったり、肩こりなどがひどくなったりすることがあります。

風邪をひきやすい

交感神経が優位になった状態が続いてしまうと、免疫力が低下することがわかっています。風邪をひきやすいという方は、自律神経の乱れにより体を守る力が弱くなっていることも考えられます。


※これらの不調は“暑さ疲労” 以外のことが原因で起こる場合もあります。長く続く場合は病院やクリニックを受診しましょう。

“ 暑さ疲労” は熱中症にもつながります!

熱中症とは、上がり過ぎた体温をうまくコントロールできなくなることで起こるさまざまな障害のこと。
体温調節をつかさどる自律神経のバランスが乱れた状態が続いていると、熱中症になりやすいといえます。“暑さ疲労” による不調が出ているという方、中でも加齢により自律神経機能が衰えている高齢者は、熱中症にならないよう特に注意する必要があります。

vol.60号【夏】の記事