自律神経を疲れさせる5つの要因&”暑さ疲労”のメカニズム

vol.60 特集 学んで防ぐ ”暑さ疲労”

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夏は疲労の季節!?

今年も厳しい暑さが予想されている日本の夏。2022年の夏は、平均気温が1898年の統計開始以来2番目の高さとなり、東京では最高気温35℃以上の猛暑日が過去最多の16日となるなど記録的な暑さになりました。
しかし、暑いのは夏ばかりではありません。今年はすでに4月から最高気温が30℃を超える真夏日になるところがあったほか、梅雨時も高温多湿になりやすく注意が必要。暑さやそれに伴う生活習慣によって引き起こされる疲労は、もはや「夏バテ」とは呼べなくなりそうです。

暑さ疲労のメカニズム

自律神経を疲れさせる5つの要因 〝暑さ疲労〞はなぜ起こる?

暑さそのものが自律神経の負担となるのはもちろんですが、暑さに伴うこの時期ならではの悩みや生活習慣の中にも自律神経を疲れさせ“暑さ疲労” を引き起こす要因があります。
本格的に暑くなるこれからの季節、特に注意しましょう。

①室内外の温度差

猛暑の炎天下では短い時間で汗が噴き出し、室内に入れば冷房が効いていて、そのうちに手足などの冷えを感じる……

こういったとき、自律神経は体温の急激な変化を防ぐために発汗を促したり末梢の血管を収縮させたりと忙しく働いています。体の状態を一定に保とうと働く自律神経は、温度差が大きな室内外を行き来すると、ヘトヘトになってしまいます。

②熱帯夜による寝不足

脱水挿絵

質の高い睡眠をとることは、自律神経の疲労回復のためにも重要です。しかし、最低気温が25℃を下回らない熱帯夜の日数は年々増加しています。夜も寝苦しくて汗をかいているなら、体温が上がり過ぎないように自律神経が働いている証し。質の高い睡眠がとれていないと考えられます。

③水分不足による脱水

暑くて汗をかいたときはもちろんですが、冷房が効いた室内にいても、乾燥によって気づかないうちに体から水分が失われることがあります。体液が減って脱水を起こすと、血液循環などの調整を担っている自律神経の負担は大きくなります。のどの渇きを感じる機能は加齢とともに衰えるため注意が必要です。

④冷たいもののとり過ぎ

よく冷えたビールやジュース、アイスクリームなどがおいしい季節ですが、冷たいものをとり過ぎると、胃腸が冷えて働きが弱くなってしまいます。胃腸の働きが低下すると自律神経のコントロール力も低下し、それがさらに胃腸の働きを乱してしまうという悪循環につながることもあります。

⑤強くなる紫外線

太陽の挿絵

4月から9月にかけて強くなる紫外線は、浴びるだけで疲労につながることがわかっています。また、紫外線が目から入っただけでその刺激は脳に伝わり、交感神経を興奮させます。その結果、自律神経が乱れ、直接肌に当たらなくても〝暑さ疲労〞につながります。

効果的な対策のために知っておきたい"暑さ疲労”のメカニズム

〝暑さ疲労〞が発生しているとき、私たちの体の中ではどのようなことが起こっているのでしょうか。疲労の基本的なメカニズムを知って、効果的な対策に役立てましょう。

疲労を引き起こすのは活性酸素 “暑さ疲労” が起こる仕組み

暑さ疲労のメカニズム
※こちらの画像をクリックすると拡大できます。

1段階
自律神経が忙しく働くと活性酸素が発生
暑さや脱水など体に負担のかかる環境に対応するため自律神経が忙しく働くと、体内で多量の活性酸素が発生します。

2段階
活性酸素が自律神経中枢の細胞を酸化
体には活性酸素を除去する仕組みが備わっていますが、その能力を超える量の活性酸素が発生すると、自律神経や脳の細胞を酸化し傷つけます。

3段階
自律神経中枢が疲労
酸化によりダメージを受けた細胞が機能低下を起こします。その情報が脳に送られ、体を休ませるために脳が「疲労感」を発生させます。

4段階
体全体の調節機能が低下
自律神経が体の調子をうまくコントロールできなくなり、体のあちこちで不調が生じます。また、熱中症のリスクも高まります。

年齢を重ねた人ほどしっかりとした対策を!

グラフ

自律神経の働きは、加齢によってどんどん低下し、6 0 代の人では10 代の人の4分の1以下になることがわかっています。つまり、60代の人は10 代の人より疲れやすく、不調を起こしやすいということ。年齢を重ねた人ほど“暑さ疲労”へのしっかりとした対策が必要です。

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