もの忘れ疲労<第1回>「年だから……」で済ませていませんか?

取材・記事原案作成:Wellulu https://wellulu.com/
人生100年時代に保ちたい記憶力
「冷蔵庫を開けたけれど、何を取りに来たのかわからない」「テレビに出ている芸能人の名前が思い出せない」「スマホをどこに置いたか忘れて探し回る」……誰しも思い当たる節があるのではないでしょうか。
年齢とともにもの忘れが多くなるのは当たり前のことですが、このようなことが頻繁にあると心身ともグッタリしてしまいますね。もの忘れの頻度や程度には、加齢だけでなく食事や睡眠といった生活習慣の影響も大きいことがわかっています。
今号では、記憶のしくみから記憶力低下の要因、記憶力を維持する対策までをご紹介。人生100年といわれる時代、体はもちろん、脳も健やかに保ち、末永く充実した日々を送りましょう。
「年だから……」で済ませていませんか?

- 睡眠不足:記憶の整理・定着は睡眠中に行われる
- ストレス:海馬やワーキングメモリに悪影響
- 栄養不足:栄養バランスの乱れが脳の炎症の原因に
- 脳疲労:情報過多による脳への負担は記憶力にも悪影響
- 加齢:脳は30代から少しずつ萎縮が始まるが、影響には個人差も
もの忘れが年々ひどくなった、もの覚えが悪くなったという自覚があると「やっぱり年のせいかな……」とあきらめてしまいがちです。
確かに、記憶力を含む認知機能は老化によって少しずつ衰えていきます。しかし、若い人でも、精神的なストレスや生活習慣の乱れがあると記憶力や集中力が低下することがあります。逆に、「健常」と「認知症」の間の状態とされる軽度認知障害(MCI)と診断されても、生活習慣を改善すると認知症への移行を防げることもあります。
しっかりとした記憶力を保つために日々何ができるのか……そこに年齢は関係ないのです。
記憶力低下のチェックリスト
もの忘れが増える、もの覚えが悪くなるといったことが、1つの目安になります。
【脳の老化や記憶力の低下に関係する主な要素】
- もの忘れが多くなる
- 人の顔や名前が覚えられない
- 同じことを何度も言う
- 「あれ、あれ」という言葉が増える
- 昨日食べたものが思い出せない
出典:西 剛志(2022)『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』アスコム
ただし、記憶力の低下自体は加齢とともに起こる自然現象なので、こういう傾向が見られるからといって、必ずしも何かの問題が起きているというわけではありません。
記憶ともの忘れのしくみ
ひと口に「記憶」といってもいくつかの種類があり、関わっている脳の部位も異なります。加齢による影響を受けやすいかどうかも、記憶の種類によって違ってきます。

大脳皮質
脳の最も外側にある、高度な精神活動の中枢。「見る」「聞く」といった五感や運動、記憶、思考などをつかさどります。
海馬
大脳辺縁系にあるタツノオトシゴのような形をした部位で、「記憶の司令塔」とも呼ばれます。
※イラストはイメージです
情報は海馬で取捨選択され、必要なものだけが大脳皮質に保存されます
STEP 1覚える
新しい記憶はまず海馬に一時的に保存されます。不要と判断された記憶は消去されます。
もの忘れの原因 01
新しい情報を覚えにくくなる(海馬の機能低下)
STEP 2蓄える
海馬に一時保存されていた記憶の中で重要と判断されたものは、その後、大脳皮質に転送され「長期記憶」として貯蔵されます。
もの忘れの原因 02
記憶を保てない(海馬・大脳皮質などの機能低下)
STEP 3思い出す
保存している情報から適切なものを取り出し(思い出し)ます。
もの忘れの原因 03
記憶はあるのにうまく取り出せない(海馬・大脳皮質などの機能低下)
「記憶」の種類
加齢の影響を
受けやすいもの
●ワーキングメモリ(作業記憶)
短期記憶から必要な情報を整理し行動につなげる力
●エピソード記憶
「いつ、どこで、何をしたか」といった自分が経験した出来事
加齢の影響を
受けにくいもの
●意味記憶
言葉の意味や概念、知識などに関する記憶
●手続き記憶
自転車の乗り方、楽器の弾き方など体で覚える記憶
脳の奥の方にある大脳基底核や、後頭部の下の方にある小脳に保存されます。


