今年は香りを上手に活用して疲労感を軽減

人は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感で情報を得ています。
とりわけ嗅覚は、脳にダイレクトにつながっており、脳の中でも本能や感情にかかわる部位に直接作用することが分かっています。

疲労やストレスを軽減「緑林の香り」成分

さまざまな香りの中で、多くの人が「心地よい」と感じる香りの一つが、緑林の香りです。
芝生を刈ったときや、葉っぱをちぎったときに感じる爽やかな香りで、青葉アルコールと青葉アルデヒドが主成分です。

これまでの研究により、緑林の香りには、抗ストレス作用や疲労感の軽減作用、疲労からの回復作用などがあると報告されています。
緑林の香りをかぐことにより脳の特定部位の血流量が増えるために、こうした作用が生まれると考えられています。
さらに、自律神経や内分泌、免疫の働きを高める作用も報告されています。

香りが脳に影響を与えるメカニズム

メカニズム1:香りに含まれる成分が、脳に届いて薬理効果を発揮します。

メカニズム2:香りが無意識に記憶と結び付き、心理効果を発揮します。

実験結果

仕事や勉強に集中したいときにも

文部科学省協力のもと実施されたある実験では、緑林の香りをかいだグループはそうでないグループに比べ、長い時間集中力が途切れないという結果になりました。

香りは医療や介護の現場でも活用されています

関西福祉大学 健康福祉学部 健康科学
科学科長
福田早苗 教授

香りにはそれぞれの香り成分が持つ薬理効果がありますが、それとは別に、心理的な効果も大きいと考えています。
私たちの研究では、香りは無意識のうちに記憶と結び付き、リラックスやリフレッシュなどの心理的な効果をもたらすことが実証されています。
中でも、緑の葉っぱや緑茶などに含まれる「緑林の香り」は、私たちの記憶と深く結び付いている香りだと思います。薬理効果と心理効果の2つのメカニズムの相乗効果で、疲労回復作用や抗ストレス作用などがより増強されると考えられます。
成分の持つ薬理効果には即効性がある一方で、心理効果は長く続けることが大切です。
毎日香りをかぎ、「この香りをかぐと疲れがとれる」と感じることで、より効果が高まると期待できます。私は、紙ねんどで「香り玉」を作り、そこに香り成分をしみ込ませて持ち歩いています。
香りがもたらす作用は、最近は、医療や介護の現場でも活用されています。皆さんもぜひ、香りを毎日の生活に取り入れてみてください。

vol.54【冬号】の記事