特集:chapter1 "なんとなく疲労"の科学

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疲れているのは脳だった

疲れる理由に心当たりがないのに「なんとなく疲れている」と感じることはありませんか?
その原因は〝脳の疲れ〞かもしれません。実は、体の中で最も疲れるのが脳だといわれています。
脳には自律神経の中枢があり、環境や状況の変化に応じて、心拍や血圧、体温などを24時間休みなく調節しています。
体に負担がかかる環境に置かれたり精神的なストレスが高まったりすると、自律神経が忙しく働き、脳が疲れます。すると、「休息をとりなさい」という警報として全身に疲労感が生じるのです。
つまり、私たちが自覚している〝なんとなく疲労〞は、脳の疲労なのです。

春は“ なんとなく疲労” になりやすい

原因01 寒暖差や気圧の変化で自律神経が乱れる

ポカポカと暖かくシャツ一枚でも過ごせるような日があるかと思えば、急に冬のような寒さに逆戻り…… このように、日によって気温が大きく変わりやすいのが、この時季の特徴の一つです。
気温の変化が大きいと、体温を一定に保つために自律神経が忙しく働き、その結果として「寒暖差疲労」が発生します。寒暖差疲労は、気温差が7℃ 以上あると起こりやすくなるといわれています。また、「春に3日の晴れなし」といわれるように、天気が変わりやすい季節でもあります。高気圧と低気圧が日本付近を交互に通過するため、気圧が大きく変動して知らず知らずのうちに私たちの体に負担がかかり、 自律神経が乱れやすくなってしまいます。

原因02 新生活が始まる季節環境の変化がストレスに

春は新たな一年が始まる季節。期待に胸が膨らむ一方で、生活環境や人間関係の変化が精神的なストレスにつながることもあります。これもまた、自律神経が乱れる要因の一つ。また、新生活においては出会いも多いですが、人間関係を構築したり、人と円滑にコミュニケーションをとったりするには、その場の雰囲気に気を配りつつ、相手の話を理解してリアクションをとるなど高度な情報処理が必要です。このようにして、脳に大きな負荷がかかることで、自分でも気がつかないうちに脳疲労が蓄積し”なんとなく疲労”につながる場合があるのです。

今年の春は特に注意!

コロナ禍でこれまで外出や会食を控えていた方も、今年の春は、出かけることや多くの人と会う機会がぐっと増えるかもしれませんね。

制限されたり我慢したりしていたストレスから解放されるのは喜ばしいことですが、これまであまりなかった刺激が急に加わると、自律神経の負担になることもあります。変化が大きくなりやすい今年の春は、疲労をためこまないように注意しましょう。

その”なんとなく疲労”もしかすると”人疲れ”が原因?!

人疲れ

脳を疲れさせる2つの”人疲れ”

楽しい飲み会が終わって家に帰ったらどっと疲れを感じた、あるいは、ショッピングを楽しんだけれど人混みで疲れた……そんな経験はありませんか? これらの疲労は、どちらも”人疲れ”といえますが、疲れの原因はそれぞれ異なります。

飲み会の後で感じるのは主に「人間関係による疲れ」であり、人混みで感じるのは「他人との距離が物理的に近すぎることによる疲れ」。
原因が違う2つの”人疲れ”ですが、いずれも、脳の疲労から体に影響が及ぶという点では同じ。こういった〝人疲れ〞が、あなたのなんとなく疲労〞につながっているのかもしれません。

1 人間関係的”人疲れ”

SNSなどでの付き合いも含め、人とコミュニケーションをとるとき、相手に対し最適なリアクションをとれるよう、脳では休むことなく情報処理が行われています。人間関係による疲れは、社交的な性格か否かにかかわらず、社会生活をしていれば誰にでも生じます。

2 満員電車的”人疲れ”

満員電車が典型的な例ですが、限られた空間の中に大勢の見知らぬ人と一緒にいるという状況は、長い間狩猟採集生活を営んできた人類の歴史から考えればありえないこと。他人との距離が近すぎるのは異常な状況であり、緊張から自律神経に大きな負荷がかかります。

こうすればうまくいく?”人疲れ”対処法

  • 聞き上手になる

疲れをためずに人とコミュニケーションをとるには、「聞き上手」になりましょう。
こちらから積極的に話を盛り上げなくても、時々うなずきながら話を聞いているだけで、相手は満足してくれるはずです。

  • 弱みを見せる

弱さ=人間らしさが見えると、人は親しみを覚えるもの。相手と信頼関係を築きたいなら、こちらは完璧でなくてよいのです。むしろ、自分から防御を解いて弱さを見せれば、相手もガードを下げてくれるでしょう。

  • 一人になる時間をつくる

他人と近い距離にいる緊張感から自分を解放するためには、短時間でも一人になる時間を持つことが大切です。空いている会議室やトイレの個室でもよいので、誰にも見られていない時間をつくりましょう。

  • 無理して人と会わない

ストレス解消や相談のためであっても、誰かとコミュニケーションをとると余計に脳が疲れます。人の多い場所でならなおさら。〝人疲れ〞を効率よく解消したいなら、一人になることをおすすめします。

vol.59【春号】の記事

  • 特集:chapter4"なんとなく疲労"と肌
    ”なんとなく疲労”を感じたらゆらぎ肌にも要注意です。ゆらぎ肌とは、一時的に不安定になってバリア機能が低下して様々な肌トラブルを引き起こすこと。
  • 特集:chapter3 "なんとなく疲労"にコエンザイムQ10
    コエンザイムQ10は、ビタミンに似た物質で、生命活動を維持するためには欠かせません。“なんとなく疲労”の解消にも役立つ代表的な2つの働きをご紹介します。
  • 特集:chapter2 低栄養による"なんとなく疲労”
    食が細くなりがちな高齢者や、偏食や過度なダイエットをする人、ストレスによる食欲不振で食事を十分にとれない人などに多く見られる低栄養。低栄養状態が続くと、筋肉量を維持できず、身体機能の低下や疲れやすさにつながります。
  • 特集:chapter1 "なんとなく疲労"の科学
    「なんとなく疲れがとれない…」この季節の”なんとなく疲労!”の原因となること、この春特に気を付けたいことをお伝えします。