座りすぎ疲労<第1回>座りすぎ疲労

読書の秋は疲労につながる!?

疲労が生じるのは激しい運動をした後や、寒暖差、精神的ストレスなどで体に負担がかかったときだけでしょうか?
疲れたときには、じっと動かないでいるのが一番の回復法でしょうか?
答えはどちらも「いいえ」。実は、ただ座っているだけでも疲労は静かにたまっていきます。長時間座って過ごしていると、身体的・精神的にさまざまな悪影響が及ぶことも、近年明らかになってきています。
夜が長くなる秋には、読書や趣味の時間をゆっくり楽しむという方も多いでしょう。
しかし、座っている時間が長くなると、せっかくの楽しい時間が疲労や不調を招くことになるかもしれません。過ごしやすい季節、いきいきとした毎日を送るために、一度、ご自身の生活を見つめ直してみましょう。

世界的に見ても座りすぎの日本人

仕事でデスクワークをしている方はもちろん、そうでなくても、移動に車を使ったり、家ではテレビやスマホを見ていることが多かったりと、現代人の生活は長い時間座りっぱなしになりがちです。猛暑や寒波など、極端な気象が増えるにつれて外出がしづらくなるとなおさらです。
中でも、日本人の座位時間※は長く、世界20ヵ国の中で最長であることがわかりました。一日24時間の中で、あなたは座って過ごしている時間はどのくらいですか?
※起きている時間のうち、座ったり横になったりしている時間

WHOが警告 座りすぎは、喫煙と同じくらい体に悪影響

世界保健機関(WHO)は、座りすぎが心臓病やがん、糖尿病などのリスクを高め、世界で年間200万人の死因になるとして警鐘を鳴らしています。最近では「Sitting is the new smoking(座ることは新たな喫煙)」ともいわれるようになり、じっと座っていることが喫煙と同様に健康を害するものと認識され始めています。

日本人が座っている時間は世界トップクラス

調査対象となった20の国・地域の中で、日本はサウジアラビアと並んで総座位時間が最も長い7時間でした。20ヵ国の平均と比べると、2時間も長いことが分かります。

日本人成人における平日の総座位時間

一日のうち11時間以上座っている人は、4時間未満の人と比べて死亡リスクが40%高くなるという研究結果もあります。

座りすぎで何が起こる?座りすぎによる悪影響

長時間の同じ姿勢が疲労につながる

長い時間同じ姿勢で作業をしたり、パソコンやスマホを見たりしていると、ただ座っているだけなのに疲労がたまってしまいます。筋肉の緊張が続くために首や肩のこり、腰痛などを覚えたり、むくみやだるさを感じたりすることも多くなります。

座りすぎは。脳にも悪影響を与えることが指摘されており、認知機能が低下するリスクが高まるといわれています。また、メンタルヘルスにも影響を与えるといわれ。特に男性では、一日12時間以上座っている人は、6時間未満の人と比べて、精神面での不調が2倍以上多くなることが分かっています。※

※Yuko Kai et al. Association between sedentary dehavior and mental health among Japanese workers. BULLETIN OF THE PHYSICAL FITNESS RESEARCH INSTITUTE.2016 Apr;114:1-10

座りすぎは、疲れを引き起こすだけでなく、健康リスクも増大させます。肥満や糖尿病、がん、心筋梗塞や脳血管疾患など、座っている時間の長さと関連があるといわれている疾患は少なくありません。オーストラリアで行われたある研究※では、25歳以降はテレビを1時間見るごとに、平均余命が約22分短くなると報告されています。

※J Lennert Veerman et al. Television viewing time and reduced life expectancy: a life table analysis. Br J Sports Med.2012 Oct;46(13):927-930.

飛行機の座席等に長時間座っていた後で立ち上がったときなどに、血の塊(血栓)が肺動脈に詰まる病気を「エコノミークラス症候群」といいます。これは決して飛行機に乗ったときにだけ起こるものではありません。水分補給が不十分な状態で長時間足を動かさないでいるとどこにいても発症する危険があるため、注意が必要です。